たび日記 2005/12/10
1ヶ所目のコルカタの行事が終了。
私たちの実演で「第2種超伝導体が持つ『ピン止め効果』を説明する理論は、どうやって思いつき、作られたのか」という、大変歯ごたえのある質問をくださった方がいた。
その方に何とか説明しようと口頭で試みるが、なかなか埒がいかない。また、我々が落ち着いて説明できない。
そこで、ノーベル物理学賞受賞者アブリコソフ氏が立てた、そのことを説明する理論を、同僚が書ける範囲で紙に説明をした。
が、こんどは第1/第2セッションの合間のティーブレイクでは会えたその彼に会えない。
もう我々は観光に出てしまう…というバスが会場の玄関まで来たとき、彼が居た。
玄関の鉄扉をスタッフがいじっている合間に、窓越しに
「あなたは、ムンバイまで来るの?」
『いや、行かない。』
「これ、同僚が書いたんだ。これを読んでみて。あと、これは私の名刺。何かあっ
たら連絡して。」
『わあ、ありがとう。』
とか、言ったか言わないかのタイミングで、我々のバスは出発。あー、間に合った。
どうも、会場のコルカタに来た、インド各地の科学館職員さんたちは、そのほとんどがコルカタだけで帰るらしい。
なんといっても人口10億の国。こうやって研修の対象者を集めるだけでも、そこそこの費用がかかるのだろう。
全員をムンバイに移動させて続きをやるなんて、できないのだろう。
逆に2ヶ所で開かずに1ヶ所で開き、そこに全員を集めようとすると、彼らの交通費がかさんで、うまくないのだろう。つまり、2ヶ所で開催する、と。
我々はごく短い観光へ。
でも、道が混んでいてどうしようもない。一応美術館に連れて行っていただいたのだが、あっという間に帰らないと行けなかった。
でも、その美術館がよかった(欧州・豪州の方はピンと来てなかったみたいだけど)。
まず、紀元前2世紀頃以降の仏像などがならんだエリアへ。ところが「関係者以外立ち入り禁止」のエリアに案内される。
すると、中ではインド国内の遺跡、石造りの建物をそのまま持ち込んで修理していた。
仏教のことがピンと来ないエリアの参加者たちにはよく分からなかったかも知れないが、興味深かった。仏陀の誕生から涅槃までの様子を物語仕立てで説明しようとした彫刻が柱にきざんである。
キリスト教であれば、屏風のように開いて見せられる形をした、さしずめアジアであれば「掛け軸」のように用いていたであろう宗教画がある。もちろん「掛け軸」も美術としてではなく、つまりは同様に布教に使っていたのだが。
これは紀元前のものであるから、さしずめそういった宗教絵画の「はしり」のようなものか。
その後は仏像群を案内人に連れられて見学。紀元前あたりの時代のものは、他の文化の影響もそれほどなく、やはり顔つきはインド人風。
ところで、よく見る「ぞうさん」が頭に付いた像もあったのだが、あれは健康の神様らしい。初めて知った。
続いて絵画のエリアへ。
18〜19世紀頃の絵画を案内人が説明するあたりで、
「日本の影響を受け…」
との由。18〜19世紀といえば日本は中国・オランダ以外接触がないはずなのに…と思ったのだが、そうか、そういや「東インド会社」が運んでいる間に落としていったのかな、と。
元禄以降の文化、特に日本の浮世絵は、その色遣いや構図が写実的なものをよしとしていたヨーロッパ絵画に影響を与えて、印象派以降の彼らに組み入れられていったというのは絵画史でよくでてくる物語だと思うが、まさにそれと同じ。一生懸命模写したのかと思われるような絵画も見られた。
しかし、案内人とその話でしゃべろうとしたところを遮られるくらい、時間に追われて出発。残念。
空港では、他の招聘者らとしゃべりながらチェックイン。何かまるで「巡業公演」のようで、だいぶなじんできた。
到着地にはほぼ定刻で到着。引率の現地科学館館長が2列後ろに座っていたので
「定常的に遅れるとか聞いてたけど、遅れないじゃないの」
と言ったら、
『いや、我々が当初取っていたコルカタ=ムンバイ便のほうが、いつも遅れるんだ。1時間くらい。』
「なんで?」
『バンコク=コルカタ=ムンバイ便だから』
なるほど。
ホテル名が
ritz hotel
と聞いていたのでかなりドキドキして行ったのだが、「なあんだ」という、超地元ホテル。
到着早々、ぐっすり睡眠。
本日の歩数:7000歩
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