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2008.08.25

たび日記 2008/08/24

ヨルダン滞在の、実質初日。

アラブの基本事項として、「週末」が、違う。
日本人が「週末」というと、土曜日・日曜日がそう。しかし「金曜日は休息日」のムスリムにとって、週末が土曜日・日曜日だと困る。そこでヨルダンの場合は金曜日・土曜日が「週末」となる。
しかし宗教上の休息日は金曜日だけなので、土曜日が「仕事の入る人は入る日」となる。遠くからの人を集めての行事などは土曜日に開かれる。

ホテルの朝食は快適。その後、今回お世話になる「アリア王妃記念教育省教育工学センター」の施設に向かう。日本のJICA・ODA(+米国のUSAid)が援助活動を行っている。JICAプロジェクトのための事務所にて、以後も昼間は過ごさせていただくことに。
そして、センターの代表とも会った。研究のことを質問されて、7月のウイーンでの学会発表内容のことを話したりする。

その後、「アンマン・チルドレンミュージアム」というところに行った。Webサイトはまだ無いみたい。こちらこちらを参照いただきたい。
昨年できたそうなのだが、その作り込み方がすばらしかった。身近な科学、国の成り立ちや歴史、コミュニケーションメディア、演劇・パフォーマンスの場などが配され、いわゆる「子ども博物館」の枠組みをきちんと抑えた、秀逸なつくりの設備だった。歩けるくらいの子から十歳程度までをターゲットとして想定している、展示で扱っている事柄をすべて、ヨルダンの国定カリキュラムや国定教科書に対応付けしてあって館の活用の参考にしていただこうとしている、等のお話に、感心。

が、現地の education manager いわく、スタッフの意識の涵養に苦労しているとのこと。教育活動担当のディレクターと話したときに私が切り出して盛り上がったのが、子どもたちとスタッフのコミュニケーションのことだった。
かるく館内をツアーして下さったところで、
「何か、ご質問は?」
と言われたので、私が
『今日は年度初め(※新年度2週目)でお客さんが少ないからあまり見られなかったけど、スタッフが子どもたちにどう関わるかがキモだよね』
と言ったところ、相当ツボに入ったか、
「そう! そこなんですよ。実は…」
と、軽い悩み相談受付の場になってしまった。

若いスタッフを配置して、1日に最大700人くらいを相手にできる規模だという。先々週までの夏休みは、大変多くの方がお見えだったのであるが、どうしても「展示のおもり」や、ハンズオンを動かす手伝いをするくらいの域を脱せず、子どもとどう関わっていくかがデザインできていないというのである。ゆさぶりながら、考えながらのアクティビティができないという、「お悩み」を伺った。

中東を初めとしたイスラームの国々は、暗唱の反復を基本としたコーラン学校の「ノリ」で"超"暗記重視の学習活動を各教科でも展開する学校がいまだに多く、日本のODAでは、そんな教育方法・技術のカイゼンにも資している。大きな器ができたなかで、このミュージアムにはどんな活動ができるのか、試されているのだろう。

開館から1年経ったところを契機に、来月9月の絶食をする宗教行事「ラマダーン」の期間に思い切って閉館し、スタッフは出勤して研修のための期間に充てるのだという。ここで、接遇やコミュニケーションについて、改めて考えさせたいというのだ。
それはなかなか良い取り組みですね、というと、
「そこで、どうしたらよいのかが悩みで…」

他には移動ミュージアムのことも話したりしたかったようだが、お互いが時間切れ。
でもまあ、お相手下さった方は大変よく勉強しておられて、「はなしが分かる」人という印象。頑張ってほしいよなあ…と思った。
お会いした方は、よく勉強されている方であった。『お知恵をいただきたく』といわれてもどれほどできるか…だが、このような方々との交流は、大切にしてさしあげたいし、大切にしたい。

が、同行下さった日本人の方が、
「ハンズオン部品が足りなかったり、動かなかったりするところがありましたよね、あれの修理や部品補充が、おそらく出来ないでいるんじゃないかと…」と、厳しい指摘。
そこで、そのような施設設備の開発・メンテナンスを行うような企業・産業の育成も同時に図ることが必要なこと、日本では博物館・ミュージアムの施設設備を担う企業の中には上場企業もあること、日本は数の上ではミュージアム大国で、例えば水族館の館数は米国に続いて世界2位であること、などをご紹介した。


で、戻ってから話し合ったときに、入場料金の話になる。
==========
入館料 1人1日
一般     3ディナール
私立学校団体 2ディナール
公立学校団体 1ディナール
==========
現在1ディナール=165円ほど、1ディナール=1ユーロ見当なのだが、この1ディナールですら、高いというのだ。

公立学校教員の月給が1000ディナール台だという。月給の千分の一ということであれば、日本の公立学校教員で賞与を月給に分割すると月40万円程度の計算になるので、400円ということになる。あ、じゃあ、まあまあ良い値付けな
んじゃないの?と思ったら、さに有らず。公立学校に割り当てられた予算が、貧弱だというのだ。この1人1ディナールを払うのが相当過酷だというわけだ。
年間に子どもたちに割いている予算から、紙や太字のマーカーを買う費用すら、おそらく苦労しているはずだという。ミュージアムを訪れるためには、費用は入館料だけでは済まない。団体の移動の交通費なども発生する。そもそも校外学習行事はあまりしないそうで、そうそう来られる場所ではないことを知る。

あと、物価の感覚の違いというのもあるという。現地の安い食事などで生活をしている人たちにしてみると、ちょうど「1ディナール=1000円」みたいな感覚がしっくりくるというのだ。
最近は世界的な資源高の影響や、それに耐えられなくなった政府の補助金政策の変化もあって「1ディナール=数百円」程度の感覚になってきているかも、ということだが、そうすると、
  「一般・1人1日3ディナール=感覚的に2000円かそれ以上」
や交通費を、さらに夫婦に子どもがもともと多いという前提のムスリムに払わせるのは、実に大変なことだというわけである。

言われてみれば、たとえばキッザニア東京も、この国のムスリムのように子どもが多い(4~5人平均、年齢が続く「年子」も多い)ことを前提にすると、あり得ない入場料の高さである。金銭感覚的にはそのくらいのことを求めていることになるわけで、それは、きつかろうと、うならされる。


夕方はショッピングモールに買い出しにもいったのだが、「あれ?」と思うほど、少ない歩数。

今日の歩数:8800歩

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